東京アスリート認定選手・インタビュー(46)岩渕幸洋選手(板橋区) 卓球(肢体)(2019/10/4)

岩渕幸洋選手の写真
【プロフィール】
  • いわぶち・こうよう 1994年12月14日生まれ。協和発酵キリン株式会社所属
  • 2018年 アジアパラ競技大会 個人 準優勝 団体 優勝
  • 2018年 世界選手権3位
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リオデジャネイロ2016パラリンピックの後に取材してから1年半、今回は、8月1日(木)から3日間に亘り港区スポーツセンターで行われたパラ卓球の国際大会『ITTF PTTジャパンオープン2019 東京大会』直後にお話を伺った。
 東京2020大会のプレイベントとして行われ、世界ランキングにかかわる重要なポイント対象である本大会。シングルス男子『クラス9』(立位)で銅メダル、団体戦で銀メダルを獲得した岩渕選手に、大会を振り返り、そして東京2020大会への意気込みを語ってもらった。


~ジャパンオープンの感想をお聞かせください~

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こういうオープン大会は、なかなかお客さんが入る試合ではないですが、今回は東京2020パラリンピックの1年前ということもあって、お客さんがたくさん入って、とても良かったと思います。
 来年を見据えて、どのクラスもトップ選手が出場していて、非常に面白い試合がたくさんあったので、来ていただいた人にはパラ卓球の魅力を味わっていただけたと思います。


~シングルスでは銅メダルでした~

今回のジャパンオープンで優勝できなかったことは悔しい結果でした。メディアや観客がたくさんいる会場というのも、自分の経験の中ではあまり多くないので、そういう意味では大会本番に向けていいイメージリハーサルになりましたし、今後どういう風に準備をしていけばいいのかが分かった試合でした。


~団体戦は銀メダルでした~

東京2020パラリンピックも『クラス9』と『クラス10』がコンバイン(統合)されるということなので、今回のジャパンオープンでは、大会本番に向けて私が属する『クラス9』より1つ障害が軽い『クラス10』のカテゴリーの選手と対戦しました。
 最後の試合で自分よりポイントが上の選手に勝てたということは、1つ収穫があったと思います。
自分の技術やプレーが『クラス10』でも生かせるということが分かったので、手応えを感じましたし、自信にもなりました。
 ダブルスに関しては、まだ2人での練習不足で、経験も浅いので、今後パターンを増やしてやっていけば、まだまだ伸びしろがあると思っています。


~東京で2度目のパラリンピック出場を目指します~

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前回は感覚がなくなるほど緊張というか、試合自体に入り込めなかったというか…。対策練習はしていましたが、その引き出しを全く出せずに終わってしまいました。実はあまり試合の詳細を覚えていません。気づいたら試合が終わっていたという感じです。
 その中でも特に印象に残っているのは、初戦で対戦したベルギーのデポス選手。自分と同じようにパラリンピック初出場でしたが、あの独特の雰囲気に飲まれて大崩れしても、土壇場で自分を取り戻す強さをもっていたと思います。自分と同じ条件だったのに、彼はしっかりと結果を出していた。本当に凄いと思います。彼は現在、世界ランキング1位ですし、今回もライバルになると思っています。
 前回の試合内容はほとんど覚えていませんが、自分が目指していた舞台がとても厳しいものなのだということを知ることが出来たという意味では、とてもいい経験になりました。東京2020パラリンピックへの出場が決まれば、パラリンピックは2回目となるので、前回と同じ状況にならないように、再びあの雰囲気でプレーするイメージを作りながら日々練習をしています。


~リオデジャネイロ2016パラリンピックを終えて、どんな変化がありましたか?~

現地では陸上や水泳など、いろんな競技を見に行きました。自分の試合よりも、車いすラグビーを見に行った記憶の方が鮮明です(笑)。他の競技を見ることで、改めて大会の凄さやすばらしさを感じましたし、もう一度あの舞台に立ちたいという気持ちを起こさせてくれました。
 東京での開催が決まって、パラスポーツを取り巻く環境が変わってきています。日本国内で試合をすることが少なかったので、今までにない難しさや厳しさがあると思っています。


~パラリンピック初出場の翌年から、実業団で「男子1部リーグ」上位の卓球チームに所属しました~

健常者のトップ選手は試合中にどんな会話をして、日ごろからどんな意識で練習しているのかに触れることで、自分の中で基礎的な部分が格段に上がってきたと思っています。特に、トップ選手が考える『当たり前』に触れることが出来たのは、自分にとって一番大きな変化だと思います。
 以前はミスしたくないために、ボールを入れなくてはいけない、という部分に意識がいき過ぎて、ボールばかりを見ていました。しかし、トップ選手はボールを視界に入れつつ、相手の動きをしっかり見ているんです。実業団に入るまではそんな意識をしていなかったので、とても勉強になりました。相手との駆け引きをもっと考えてプレーしなくてはと思うようになりました。


~普段は健常者の選手と練習しているようですが、苦労したことはありますか?~

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普段の練習からいろんなボールを出してもらったり、速いプレーの中で培った経験によって、パラ卓球のゆっくりとしたボールに対して、より余裕を持って対応できるようになりました。以前は予想外のボールがくると返すのが精いっぱいでしたが、今はボールに対しての対応力も上がり、より余裕をもって返すことが出来ているので、パラ卓球と卓球の感覚のズレはあまりないと思います。
 ただ、パラの試合が空きすぎるとその感覚が鈍ってしまうので、今はパラの試合にもたくさん出させていただいていますし、とてもいい環境の中で試合ができていると思っています。


~自分の成長を感じますか?~

世界ランキングも前回大会時の13位から、現在は3位(2019.09現在)まで上がってきました。以前は自分より格上でランキング上位の選手にも勝つけれど、反対に格下の選手にも負けてしまうこともありました。今はそういった取りこぼしがないようになってきたのは、自分としても成長した部分だと思っています。見える世界は確実に変わってきました。
 昔は目の前のことだけで一杯いっぱいでしたが、今は3つ先くらいまでは考えられるようになってきました。しかし、勝っている試合でも、途中で硬くなってボールが入らなくなることもあるので、そういったズレにもいち早く気づき、修正できるようにしていきたいと思っています。


~東京2020大会への意気込み~

僕の目標は「金メダル以上」。
 前回は出ること自体が目標となっていましたが、今回はしっかりと結果を出したいので、より高い目標を持たなくてはいけないと思っています。金メダルを取ることは簡単なことではないですが、メダルを取ったその後を見据えているからこそ、「金メダル以上」を目標にしています。金メダルを取ることで、パラ卓球の魅力をさらに発信でき、今後のパラスポーツの普及活動につながると思っています。
 国際大会に出場して、海外でのパラスポーツに対する意識の違いを感じてきました。日本はまだパラスポーツに対する認知度は低いと思っています。2018年にイギリスで開催されたパラの世界陸上で、競技場が満員に埋まったというニュースを聞いて、ロンドン2012パラリンピックから6年も経っているのに、今でもパラスポーツの試合でこんな盛り上がりが続いていることに衝撃を受けました。

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 イギリスでは文化としてパラスポーツが認められているんだと実感しました。日本もイギリスのようになるためには、まず、今回結果を出して、パラスポーツの未来へとつなげていきたいと思っています。継続的にパラスポーツの大会を日本でも開催してもらいたいし、もっといろんな人に知ってもらいたいです。

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