東京アスリート認定選手・インタビュー(5)三島廉選手(青梅市・世田谷区) カヌー(スラローム) (2016/12/9)

~オリンピック・パラリンピックを目指すアスリートを応援~
【東京アスリート認定選手・インタビュー】


東京都では、東京のアスリートが、オリンピック・パラリンピックをはじめとした国際舞台で活躍できるよう、競技力向上に向けた支援を実施するとともに、社会全体でオリンピック・パラリンピックの気運を盛り上げるため、「東京アスリート認定制度」を創設しました。

このページでは、認定選手の皆さんに「スポーツを通して自分を成長させ、スポーツと社会のよりよい関係を考えていこう」というテーマで、インタビューをしていきます。

第5回 三島廉選手(青梅市・世田谷区) カヌー(スラローム)
コースの波も、精神的な波も、人としての
軸をしっかりつくって、乗り越えていきたい

西 勇輝選手の写真

みしま・れん 1997年12月15日生まれ。東京都立青梅総合高等学卒業。日本体育大在学中。NPO法人青梅市カヌー協会所属。種目はカヤックシングル。ワールドカップ出場(2014-2016)、アジア選手権国別2位(総合3位)(2016)、ジャパンカップ最終戦(K-1)2位(2016)
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世界で戦うために、自分に足りないと感じた3つのこと

リオデジャネイロオリンピックで、日本カヌー界初のメダリストが誕生した瞬間は、自宅のテレビで食い入るように見ていたと三島廉選手は言う。 「(羽根田)卓也さんがノーミスでゲートを通り、ゴールしたタイムも良かったので、結果を期待しながら後続選手のレースを見ていました。最後の選手が5位になり、卓也さんの銅メダルが決まった時は、カナディアンとカヤックの違いはありますが、同じカヌースラロームということもあって、本当に感動しました。日本人にはオリンピックのメダルは厳しいと言われていたのに、それを覆してくれた。メダルに対しての意識がさらに高まりました」

練習中の写真

三島選手は、尊敬する先輩の快挙に、自分が世界で活躍するためには、3つのことが足りていないと痛感したという。
「1つ目は海外の様々なコースで漕ぐ経験です。卓也さんは、高校卒業後に単身でカヌー強豪国のスロバキアに留学して、ヨーロッパの人工コースや様々なコースで練習されたり、試合に出ていました。日本には人工コースがなく、試合のできるコースも限られているので、海外には何度か試合で訪れただけの私は、あまりに経験が少ないなと」
海外遠征の旅費は、自己負担が多く、現在は大学1年生ということもあって授業も多いので、渡航回数や滞在期間は限られてしまうが、少しでもその機会を増やしたいという。

「2つ目はフィジカルです。コーチにもお願いして、トップアスリートを担当されている専門のトレーナーに指導を受けたいと思っています。3つ目は栄養管理です。ある程度の基礎知識はありますが、自宅で暮らしているので、いつも食事は母に任せっきりでした。もっと自分でも積極的に栄養について勉強して、フィジカル強化と合わせて、どんなコースにも対応できる体づくりをしなければと考えるようになりました」
明確に課題設定をし、全力で取り組んでいかないと、世界では通用しない。三島選手は、この秋から自主的に動き始めたという。


テクニカルサポート事業で、メンタルを強化

御岳渓谷の近くで生まれ育ち、小学校6年生のときに、NPO法人青梅市カヌー協会の講習会に参加したことで競技を始めた。パドルを繰ると、川を自在に動ける。それが楽しくて、二人の弟たちと連れ立って多摩川に行き、艇を浮かべて、夢中で乗りまわした。
試合に出るようになり、中学2年生の時に海外遠征を初めて経験。チェコからドイツへ。川は日本とは勝手が違い、水量の多さ、流れの強さ、速さ、波の立ち方などに怖さが先行した。生活や文化の違いにとまどい、緑色をしたパスタなど、食事にもなじめなかった。それでも中学3年生のオーストラリア遠征のときは、余裕も出来、ジュニアの日本代表として世界ジュニアにも出場した。

練習中の写真

地元の高校に進むとより練習に身が入った。朝5時半に家を出て、多摩川で1時間ほど自主練習してから登校する毎日。学校が終わると、凍えるような冬の寒風の中でも欠かさず艇に乗った。おもしろいぐらい練習の成果を実感できて、競技力が伸びた。2年生ではジュニアの日本代表に加え、シニアBの選手になり、ワールドカップやアジア選手権も経験した。ところが3年生になり、後輩選手の成績が上がってくると、焦りを感じたのか、メンタル面の弱さから、それまでできていたことすらできなくなって、不安に駆られ、自信を失っていった。

「メンタルを鍛えるにはどうしたらいいのだろう」と悩む三島選手は、東京都のテクニカルサポート事業の「メンタルサポート」を受ける機会を得た。
「リラックス方法や目標設定の仕方、練習日誌のつけ方などを指導していただいて、救われました。いろいろ試してみて自分に合ったものを選んで、実践すればいいと言ってくださって」
波と格闘するカヌースラローム競技。渓流の波だけではなく、ときには精神面での波ともうまくつきあっていくことが求められる。コース条件が一定ではない、自然を相手にする競技には、人としてもアスリートとしても、ブレない軸を持つことが大切だ。


自分の体格、個性を生かした強みを磨く

身長160センチ、50キロの体で激しい流れに逆らって、漕ぎ続ける。パワー負けしないのかと聞いてみると、自身の強みをはっきりと口にしてくれた。
「私は体が小さい分、コースのラインをコンパクトに取ることができ、正確かつ効率よく、攻めることができます。メンタルが安定してからは、攻撃的に強気で攻めることも、勝ち方のひとつになりました。練習は試合だと想定して、本番さながらに練習しています」
約250mの激流の中、約25のゲートを通過し、高度なテクニックとスピードを駆使して、パドルを激しく動かしながら戦う。その間、およそ90秒。競技としては過酷だが、三島選手の練習する場所近くには、休日などレクレーションでカヌーを楽しむ人も少なくない。「大人から子どもまで遊べるし、日本にはたくさん川があるので、もっともっとコースを増やして、気軽に乗ってもらえたらいいなと思います」

仲間との集合写真

最近、近隣の中学校からカヌーを教えてほしいと頼まれた。人に教えることで、自分もとても勉強になった。東京オリンピックに向けて、自分でもできることでカヌーを身近に感じてもらう活動をしていきたいという。
「こういう授業をきっかけに、興味を持ってもらって、競技人口を増やしていけたら。そのためにも東京オリンピックに出て、活躍したいです」
羽根田選手に続いて、女子でも、カヤック種目でも、オリンピックでメダルを取って、カヌーを広めたい。まずはシニアA代表入りをめざし、来年行われるU23の世界選手権での表彰台を目指す。
「同じ日体大生で、オリンピックで活躍している選手もいるので、話す機会をつくって刺激を受けたい。都内の国立スポーツ科学センターなどで学べることにも、貪欲に取り組みたいと思います」


強くなるためのキーワード

カヌースラロームは、どんな競技?

カヌーのオリンピック種目には、フラットな水面で着順を競う「スプリント」と、激流の川に設置されたゲートのポールに触れないように通過しながら、速くゴールする「スラローム」がある。三島選手はそのスラロームのカヤック(両端に水かきのあるパドルで左右交互に漕ぐ)、羽根田選手はカナディアン(片側に水かきがあるパドルで漕ぐ)という種目で、世界の難コースに挑んでいる。

公益社団法人日本カヌー連盟(カヌーについて):
http://www.canoe.or.jp/history/about_canoe.html

東京×カヌー

三島選手の所属するNPO法人青梅市カヌー協会の公式サイトやfacebookでは、大会の告知やイベントの案内などを随時更新している。艇庫のある御岳では、初心者からオリンピック選手までがカヤックを楽しんでいる。

NPO法人青梅市カヌー協会公式サイト: http://www.ome-canoe.org/
NPO法人青梅市カヌー協会facebook: https://www.facebook.com/omecanoe
青梅市御岳交流センター:http://www.omekanko.gr.jp/exchange/index.htm


【スポーツを通して身に着けられるライフスキル】

自分が強くなるためにどうしたらいいか。自分に何が必要で、どうしたらそれが得られるのか。大学生になって、自分で考え、動けるようになってきた。好不調の浮き沈みをなくし、心身のコンディショニングを高いレベルに持っていくために、使える機会をフルに生かしていく。悩み、行動し、失敗し、つかんだものは、現役引退後に指導者になったときに財産になる。自然の中で行われる競技ゆえ、雨にも風にも暑さにも寒さにもタフである。