東京アスリート認定選手・インタビュー(1)塩崎優衣選手(中野区) ラグビーフットボール (2016/8/10)

~オリンピック・パラリンピックを目指すアスリートを応援~
【東京アスリート認定選手・インタビュー】


東京都では、東京のアスリートが、オリンピック・パラリンピックをはじめとした国際舞台で活躍できるよう、競技力向上に向けた支援を実施するとともに、社会全体でオリンピック・パラリンピックの気運を盛り上げるため、「東京アスリート認定制度」を創設しました。

このページでは、認定選手の皆さんに「スポーツを通して自分を成長させ、スポーツと社会のよりよい関係を考えていこう」というテーマで、インタビューをしていきます。

第1回 塩崎優衣選手(中野区) ラグビーフットボール
男子だけの部活に入部。文武両道を目指す。
成長できると思う環境に、迷わずトライ!

塩崎優衣選手の写真

【プロフィール】しおざき・ゆい 1998年3月31日生まれ。中野区立北中野中学校、都立青山高校を経て、慶應大学在学中。所属チームは東京フェニックス。15人制U18日本代表など。
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ラガーマンの父親の影響で始め、男子と一緒にプレー

快晴の江戸川競技場では、朝から多くのラガーウーマンが集まり、楕円のボールを夢中になって追いかけていた。激しいタックルで腕にすり傷。泥だらけの顔。滴り落ちる汗で髪はぐしゃぐしゃ。それでもその姿を美しいと感じるのは、彼女たちが内面から「大好きなラグビーが思い切りできるという喜び」で輝いているからだろう。

練習中の写真

その大会の優勝候補のひとつ、東京フェニックスの試合が始まった。いきなり先制トライを決めたのは、塩崎優衣選手。160センチのどちらといえば小柄な体で、巧みにボールを奪うと気持ち良さそうに一気に駆け抜けていった。チームは次の試合で惜敗し、優勝は逃してしまったが、はつらつとしたプレーが目を引いた。リオデジャネイロオリンピックの代表選手を送り出している強豪チームで、スタメンを張っている慶應大学1年生。あこがれの先輩の背中を負いながら、桜ジャージを着て日本代表としてプレーすることを夢見ている。

ラグビーと出合ったのは、小学校2年生。ラガーマンだった父親に連れられて体験した、岡山のラグビースクールに、即入部。動機は「楕円のボールを使った鬼ごっこが楽しくて」。
 小学校5年生のときに、父親の転勤で岡山から東京へ。自宅に近い杉並のラグビースクールを探して、迷わず入部した。岡山でも同学年に女子はいなかったが、杉並のスクールも、中野区立北中野中学校のラグビー部も女子は一人だけ。「男子と一緒に、女子一人でプレーすることには慣れていたのですが、中学になると、さすがに男子とは"当たりの面"や"スピードの差"を感じるようになって。辞めたほうがいいか、悩んだこともありましたが、3年生ではレギュラーになれた。嫌なことがあってもラグビーをしていれば、イキイキと自分を出せるし。やっぱりラグビーが好き、もっと続けたいと思った中学時代でした」


高校入学前に、ラグビー部に女子が入れるかを自分で確認

高校では、女子は男子と一緒の試合には出られない。それでも、進学後はラグビー部に入って、毎日練習したいと思った塩崎さんは、志望校を決める前に、行きたい高校のラグビー部が、女子を受け入れてくれるかどうか、自ら確認に出向いたという。「入学してから、女子は入れないと言われたら困るので、それなら自分で直接聞きに行こうと。青山高校のラグビー部の先生は"前例がないけど、よかったら一緒にやろう"と言ってくださったので、ここならラグビーも勉強も思い切りやれると思って、決めました」

練習中の写真

またも、女子部員は一人だったが、ラグビー経験者は塩崎さんだけということもあり、ひるむことなく男子とともに汗を流すことができた。女子マネージャーの存在も心強かった。高校2年のときには7人制の女子の強豪クラブチームにも加入。部活とクラブと勉強に全力で取り組む姿を見て、友人たちからは「女子一人でも、ラグビーをやっているなんてすごい」「休み時間まで勉強していて、両立にこだわってる優衣を見ていると、私も負けられない」と声をかけられることも増えた。その言葉が塩崎さんの励みになり、ラグビーを頑張る原動力にもなったという。


応援してくれた人たちへの、恩返しのつもりでやり抜く!

リオデジャネイロオリンピックから、女子の7人制ラグビーが正式競技として採用され、塩崎さんの所属クラブの先輩たちも、日本代表合宿に招かれるようになった。先輩たちの夢に向かって粘り強く挑み続けている姿や、ケガにも負けずに何度でも立ち上がる姿を見て、塩崎さんの胸は高鳴るばかり。高校卒業後も、ラグビーと勉強を頑張りたいと、AO入試で慶應大学に合格。夏には3週間、ラグビーを学びに文部科学省の事業を活用して、ニュージーランドへ。年末には全国高校ラグビー大会で、女子の東西対抗戦に出場し、東軍のキャプテンとして活躍。15人制のU18の代表にも選ばれ、今は大学と練習とで、毎日へとへとになりながらも、充実した日々を過ごしている。所属クラブでは「気持ちとプレーに波がある」と自分で克服テーマを決めた結果、だいぶ安定して力が発揮できるようになってきた。最近は、スタメンで使ってもらう機会も多いという。

それでも、日本代表になるためには、まだまだやるべき課題がたくさんある。そんなに甘くないことは、代表選手が身近にいるからこそ、リアルにわかっているつもりだ。「私は体格がいいわけではなく、足も速くない。そういう強みのある選手を生かせるようなマルチプレーヤーとして、チームに貢献できることを増やせるよう、体力面も技術面も、もっともっと頑張らなければ。桜ジャージを着たいなんて、軽々しく言えないと思っています」

練習中の写真

リオデジャネイロオリンピックの女子ラグビーは、テレビの前で応援する。世界最高の舞台で戦う先輩たちを見て、塩崎さんは何を感じるのだろう。その感情はどんな行動につながっていくのだろう。
「自分が今日までラグビーを続けてこられたのは、たくさんの人たちのおかげだと思っています。女の子がケガだらけでラグビーをやっていても、好きにやりなさいと見守ってくれている家族や、何でも相談に乗ってくれ、応援してくれる友達。人に恵まれているなぁと思うし、お世話になった人たちへの恩返しの意味でも、いい試合をして、結果を出したい」

道なき道を自分で拓き、男子と一緒に練習して、女子の活躍する場を自然な流れで広げてきた塩崎さん。やりたいことを、勇気を持って貫いていく。ラグビーも勉強も。欲張りに、ひたむきに、前へ、前へ。その姿は、必ずや周りを元気づけている。 ノーサイドのときが訪れるまで、塩崎さんの全力チャレンジは続く。


強くなるためのキーワード

ラグビーフットボールの魅力

「どんな人でも、活きるポジションがある競技だと思います。オリンピック競技にもなり、男子ワールドカップでの日本の活躍もあって、今後ますます注目され、伸びていく競技です」

東京×ラグビー

「東京には気軽に入れるラグビースクールが、たくさんあると思います。ぜひ体験してみては。女子のクラブチームも色々あります。それと秩父宮ラグビー場が都内にあるので、すばらしい試合を生で見られるチャンスも多い」

いつも心がけていること

「チームが勝つために必要だと思うことがあれば、年が上とか下とか関係なく、言うようにしています。自分もゲームをつくっている一人だという意識を持っているからです」


【スポーツを通して身に着けられるライフスキル】

塩崎さんの場合、女子が男子の中に混ざっても、対等な立場で部活動ができることを実践しています。自らが入部を交渉し、女子一人でも組織の中でしっかりとした人間関係を築いてみせることで、周囲に与えている刺激は大きいと思います。